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マルズログ

 ランニングと日々の雑記帳

西 穂

山雑記

 

梓川の遊歩道から田代橋を渡り、よく踏まれた登山道に入ると、

あまりひとが入ってないのか、しばらくして前方にサルの群れが現れ、

十数匹が一団になって、こちらをうかがいながらゆっくりと移動している。

このサルはなかなか警戒をとこうとしない。

あとから聞いた話だと、サルのような小動物とは眼を合わさない方が良いらしい。

大きい動物はどうかわからないが、しばらくして振り向くと、

まだボスザルがじっとこちらの様子をうかがっていた。

 

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                                         * 梓川

早朝出会った「ニシホ」へ上がる三人の熟年パーティーはそろそろ小屋に着く

頃かもしれない。枝沢の水場で休んでいると、

賑やかな声と一緒に三人の若い外国人が上がってきた。

学生みたいだが、三人とも靴は皮革の良いのを履いている。

彼らも休憩かと思ったら、「こんにちわ」と云うと、

先を争うように通り過ぎて行った。

サルのあと、二頭のカモシカと出会い、つぎはクマか?と思ったが、

外国人とは驚いた。

案の定、それから三十分もしないうちに追いつくと、こんどはイラストマップを

見せながら何やら尋ねてきた。どうも「オクホ」へ行きたいようだが・・・、

それは無理だろう・・・、三人とも弁当しか入っていないようなデイパックひとつ、

手を左右に振りながら、「兄ちゃん、穂高をなめちゃいけないよ・・・」と

言いかけたが、「very hard」とか「too far」とか、へたな単語をならべて、

「ムリムリ」と云ってもキョトンとしている。

こちらの説明もお粗末だが、あまり真剣に聞いていない、

また「ダメダメ」と手を振ると、どう解ったのか「OK!」、「サンキュウ!」と

さっさと行ってしまった。

昼ちかく稜線にぬけると「ニシホ」の小屋はすぐだった。

小屋の広場にある石のテーブルで、三人組のおばさん達が笑いながら

弁当を食べていたが、その横でリーダーのおじさんがバテていた。

「西穂山荘」は外観からして、穂高の山小屋というイメージがしない。

昼の仕度をはじめると、玄関で人の出入りが激しくなってきて、

どうやら大きな自動販売機のお引っ越しみたいだ。

従業員総出のようだが人手が足りない。

仕方ないので重い腰を上げると、「いやー、どうもすいません・・・」

それにしても半端ない重さだ。こういう時こそ、例の兄ちゃん達が

いないといけない・・・、

やっと昼を済ますと、ちょっと小屋の中を覗いてみることにした。

レストハウスは二重のアルミサッシで、水1㍑百円、インスタントコヒー250円、

手づくり本格派400円、奮発して手づくり本格派にする。

二組のカップルの囁く声以外に音がしない。

ちょっとひとりで居づらい気分・・・、西陽が真横からさしこみ、

背中が熱くてたまらない。窓の外は「笠ケ岳」と「錫杖岳」が墨絵になって、

ゆるやかに稜線を南へ落としている。

邪魔しちゃいけないのでさっさと退散、泊まりの届けを出しに行く。

「西穂」の夕景を撮りに稜線まで上がってみることにしたが、

「西穂」は「ピラミッドピーク」に隠れて姿も見せず、「霞沢岳」も逆光で、

何も撮れずに降りてきた。

まだすこしはやいけど、他にすることもないので、

レストハウスの年期の入ったベンチで、ごそごそ自炊の仕度をはじめたが、

他に誰もいないし、ここでいいのかよくわからない。

しばらくすると、売店の奥から「お酒飲まれますか・・・」と声がして、

迂闊にも「エエー、アァー」と答えたが、あとがつながらない。

すると、いきなり見覚えのある小屋のお兄さんが現れて、

「昼間はどうもありがとうございました・・・」と、

「岩波」のワンカップを二本、燗して差し入れてくれた。

おまけに、しばらく話し相手にもなってくれて、

聞くと、自炊の客はほとんどいなくて、テント泊も少ないようだ。

偶然にも、彼は今日限りでここをを辞めるらしい。

山で働いていると、好きな山にもなかなか行けないし、

仕事を変えて山岳会にでも入って、本格的に山をやりたいらしい。

昼をあとにして、たまに良い事をすると、うまい酒と話し相手にめぐりあえた。

 「霞沢」の部屋に戻ると、みなさんまだ食事のようなので、

早々とフトンにもぐり込んだ。

 

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                                  * 独標  

翌朝、6時小屋を出発、他の泊まり客は6時半朝食なので誰もいない。

このぶんだと「西穂」までずっと独りかも知れない。

「丸山」を過ぎると、先日降った雪がまだ飛騨側に残っていて、

稜線を境に陰と陽とがはっきりと分かれ、信州側は陽が当ってポカポカだが、

飛騨側は風もあって冷気に震え上がる。

途中、「松本深志高校」のレリーフに黙祷して、7時「独標」に到着。

登りはほとんどなかった雪が、「独標」北面にはべったりと張り付いて滑りやすい。

「独標」から四つ目の尖ったピーク「ピラミッドピーク」を越え、

物音ひとつしない岩稜帯をいく。

 

8 時45 分「西穂高岳」山頂。「奥穂」の「吊り尾根」と「畳岩」が、

粉砂糖をまぶしたような雪で、逆光にキラキラ輝き、

すっぱりと切れ落ちた「飛騨尾根」の上に「奥穂」、

その左に「槍」のピークが鋭く天空を突き刺している。

朝陽をいっぱい浴びた赤い豆粒みたいな「岳沢ヒュッテ」が

「コブ尾根」の末端にへばりついて、対象的に飛騨側は、

薄氷の「西穂沢」が青白く冷気に沈み込んでいる。

そんな虚空のどこかから一羽の「岩ひばり」が現れて、

こわがる様子もなくピョンピョン近づいてくる。

カロリーメイト」を潰してやると残さずたいらげ、

また、どこかの空に飛び立っていった。

 

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                                 * 西穂沢  

よくやく「ピラミッドピーク」に人影が見えると、セルフポートレートを一枚

おさえて山頂を後にした。

途中で、声のでかい泊まり客のオヤジが息を切らせて上がってきた。

「はやいですねー、もう下山ですか〜」

背中に小さなナップザックひとつ・・・?

それじゃ〜あの学生達と変わらない。

先のルートを聞かれ、自分の通った山頂への直登ルートを教えたが、

それは間違いで・・・、左に鎖の着いた正規のルートがあった。

山頂に人影が見えたのでひと安心だが、「オヤジさんごめんなさいね!」

そのあと若いカップルと単独の男女とすれ違い、「ピラミッドピーク」で

「富山」のご婦人に記念撮影をたのまれると、ゆっくり降りたつもりが、

いつのまにか賑やかな「独標」に着いてしまった。

これなら「ピラミッドピーク」でもっとゆっくりすればよかった。

 

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                               * 奥穂 吊り尾根

「独標」でとっておきの「ぜんざい」を食べようと、信州側の斜面に降りると、

一緒に登山者がついて来るので、急斜面だし戻って食べることにする。

ここにいる登山者の大半は「独標」止まりで、なかにはビール片手の御仁もいて、

狭い山頂で混み合うと危なかしくてしかたない。

「西穂」は他の三つの「穂高」にくらべ、ひとりぽつんと離れ、

 周りの山からみても、他の名前が付けられてもよかったような気がする。

それと、「ロープウェイ」がついたことで、「西穂」の影武者のような、

近くて手軽に行ける「独標」に人気を奪われてしまった。

そんなことを思いながら、広場に戻ってザックを開けると、

なんと、ぜんざいのパックが 封を切ったまま・・・

飛ばして降りてきたので・・・!!!

 

 気付くと、いつの間にか腰を上げる時間になっていた。

下りも同じコースで、来るときはサルと、カモシカだったから、

今度こそクマに出会えるかも知れない。冗談じゃなく本当にそう思っている。

可能性はかなり大きい。特に利用者が激減した「上高地」の人里にも近い

この静かなクラシックルートは確率は高い。例年今頃仕掛けた檻に

何頭か捕獲されてる。

 

昼過ぎ「西穂山荘」をあとに下山にかかる。

途中、単独の登山者を追い越すと急な長い下りにかかり、

登りでは気づかなかったが、路が結構不明瞭で解りづらい。

何度も立ち止まり目印のポイントをさがす。兄ちゃん達のせいでもないが、

どうも登りのときの記憶がうすい。

「こんなところ、通ったかな・・・?」というのが続く。

樹林帯の下りは迷いやすく、ここの冬は厳しいルートになりそうだ。

 

結局、ザックを引っ掛けてスリップした、大きな倒木の処に出るまで

ルートに気が抜けず、「田代橋」まで、クマはおろかサル一匹とも出会う

ことなく降りてしまった。

上高地」の小屋はきょうでほとんどが店じまい。

バスターミナルもいつになく閑散と静まりかえっていた。

来週あたり「西穂」の稜線は純白の衣を纏って、

光り輝いてるにちがいない。 

            *これまでの山行記録、雑文を新しくブログ用に書き換えました。

                           (データ等はそのまま記載)